20センター試験数学ⅡBの分析

第1問(必答問題)
[1]三角関数
 (1)は三角不等式を解く問題。加法定理で変形し,三角関数を合成するとsinに関する単純な不等式ができる。レベルは基本。
(2)はsinθ,cosθを解にもつ2次方程式に関する問題。解と係数の関係からsinθ+cosθ,sinθcosθの値を求め,sinθ+cosθの平方と結びつける。そして,sinθ,cosθの値から,角度の範囲を求める流れ。レベルは標準。
[2]指数関数・対数関数
 (1)は指数関数を使った条件式から,式の値を求める問題。対称式の扱いがKeyとなる。レベルは基本。
(2)は対数不等式を解く問題。対数の性質を使って式を変形すれば,X,Yの連立不等式に帰着する。あとは,底が3の対数は真数が大きいほど大きいことが分かっていれば手が止まることはないだろう。レベルは標準。

第2問(必答問題)
 二つの放物線と,それらの共通接線で囲まれた部分に関する問題。(1)では共通接線の方程式を求めるが,誘導が丁寧で解き易い。(2),(3)は二つの放物線と共通接線で囲まれた部分の面積に関する設問になっているが,計算量が多い。放物線とその接線で囲まれた部分の面積を求める積分では,被積分関数が完全平方型になっていることを利用すると計算が少し楽になる。(4)は求めたaの3次関数の最大値を求めるが,定義域内では極大値しかなく,そこが最大値になる。レベルは標準。

第3問(選択問題)
 漸化式を解く問題。誘導は丁寧だが,式が複雑なので,途中の式変形を何のために行っているのかしっかりと確認しながら解く必要がある。(4)は実質,整数に関する余りの問題で,3で割った余りで分類していることと,連続するする二つの整数の積は2で割り切れることがKeyになる。レベルは標準。

第4問(選択問題)
 空間ベクトルの関する問題。これも誘導に従って解いていくことになるが,ベクトルの各成分が,共通な因数を持っているときは,その因数でくくったあとの成分で考えると見通しがよくなることが多い。まさにこの問題は,そうすることで,計算および図形的な性質が見抜けると思う。レベルは標準。

第5問(選択問題)
 選択する受験生は少ないと思うので,分析は省略する。

【総評】誘導が丁寧なので,方針を立てるのはさほど難しくないが,計算量が多く,かつ複雑である。おそらく数学ⅡBの受験者は,理系の人が多いと思われるが,考え方ももちろん大切だけれど,計算をサクサク進められることも同じくらい大切だぞとの,メッセージなのかも知れない。去年にもまして計算が面倒なので,平均点は下がると思われる。

20センター試験数学ⅠAの分析

第1問(必答問題)
[1]1次関数
 直線の傾きが a の2次式になっているので,実質は2次不等式の解法や根号の入った数を代入する,式の値の問題になっている。レベルは基本。
[2]集合
 4,6,24それぞれの倍数の集合が与えられ,それらの交わりや,それぞれの補集合との交わりを考え,その要素を考察する問題。さらに,それらの集合間で命題を与え,反例を探す。レベルは標準。
[3]2次関数
 x軸と異なる2つの交点をもつ放物線に関する問題。y軸に平行な線分と共有点をもつとき,対称軸がその線分の左側にくる場合,右側にくる場合で,共有点の位置の変化がイメージできるかどうかがポイントとなる。レベルは標準。

第2問(必答問題)
[1]三角比
 三角形の内角の二等分線が,その対辺を内角を挟む2辺の比に分けることを使う問題。レベルは基本。
[2]データの分析
 (1)が,一般的な四分位数に関する性質を問う問題。一見すると戸惑うかもしれないが,明らかに正しいと判断できる選択肢が探せるので簡単。残りの(2),(3),(4)は,いずれも表の読み取りができれば容易に正答できる。レベルは基本。

第3問(選択問題)
[1]確率
 様々な確率の正誤を判断する問題。一つ一つ丹念に考えれば,難しくないと思われるが,選択肢③が条件付き確率になっていることに気付かない受験生がいるかもしれない。レベルは標準。
[2]確率
 独立試行(反復試行)の確率,条件付き確率を求める問題。センター試験の出題らしく,前出の設問の内容をうまく使うことがポイントとなる。レベルは標準。

第4問(選択問題)
 循環小数を分数で表すことに関する出題。(1)は十進法で(2)は七進法での出題。手法は典型的であるが,(2)は7の二乗をかけることで,桁数を2だけ上げられることの意味がわからない受験生もいるかもしれない。(2)の後半は,不定方程式を考えることになるが,複雑さはない。レベルは標準。

第5問(選択問題)
 チェバの定理,メネラウスの定理,方べきの定理または方べきの定理の逆の運用ができるかを問うている。概ね定理をそのまま使えば難しくないが,最後の設問でAE・ACの値を手掛かりにAG・ABの値を求め,AE・AC=AG・ABを導き,B,C,E,Gが同一円周上の点であることに気付けるかがKeyである。レベルは標準。

【総評】
 センター試験最後の出題となり,共通テストを意識してか,真新しい切り込み方の設問が見られた(第2問[2]の(1),第3問[1])。しかし,日頃から,一つ一つの問題を自分なりに分析し(無意識でも)知識の中で体系化して勉強している人にとっては問題はないように思われる。まさに,来年度の共通テストの対策としても,そのような勉強法が求められると考える。平均点は,どこかでまごつくと,全滅になる可能性のあるセットになっているため,去年より下がると考える。