数学 Chips 03

  1 次方程式の解法について説明します。
[math]2x+3=x+4[/math] という式は [math]x=2[/math] のとき,左辺は

[math]2×2+3=4+3=7[/math]

右辺は

[math]2+4=6[/math]

となり, [math]2x+3=x+4[/math] の等号は成り立ちません。
しかし,[math]x=1[/math] のとき,左辺は

[math]2×1+3=2+3=5[/math]

右辺は

[math]1+4=5[/math]

となり,等号が成り立ちます。
このように [math]x[/math] の値によって成り立ったり成り立たなかったりする式を [math]x[/math] の方程式といい,[math]x[/math] の 1 次式の方程式なので,[math]x[/math] の 1 次方程式といいます。

[参考][math]x[/math] は,1 次,[math]x^2[/math] は 2 次,[math]x^3[/math] は 3 次 … のように,[math]x[/math] がいくつかけられていいるかが,次数です。

 1 次方程式は最終的には [math]ax=b[/math] の形に変形します。(ただし,[math]a≠0[/math] とします。)そして,[math]ax=b[/math] はその両辺を [math]a[/math] で割って [math]\cfrac{ax}{a}=\cfrac{b}{a}[/math] として,左辺では分母子が約分されて [math]x[/math] だけになります。結局 [math]x=\cfrac{b}{a}[/math] で,この 1 次方程式が解けたことになるのです。

 それでは, [math]2x+3=x+4[/math] の解き方を考えましょう。
とにかく,式変形をして [math]ax=b[/math] としなければならないことに注意すると,[math]2x+3=x+4[/math] の左辺の [math]+3[/math] は右辺に,右辺の [math]x[/math] は左辺にもってくるべきです。
 実は,「[math]=[/math]」の左(左辺)のものを右(右辺)にもってきたり,「[math]=[/math]」の右(右辺)のものを左(左辺)にもってきたりする方法があるのです。それを移項といいます。
 移項では,移項するものの符号を「[math]+[/math]」は「[math]-[/math]」に「[math]-[/math]」は「[math]+[/math]」に換えます。
よって,[math]2x+3=x+4[/math] は

[math]2x-x=4-3[/math]

と変形できます。すると [math]2x-x=(2-1)x=x[/math] であり,[math]4-3=1[/math] ですから,

[math]x=1[/math]

が,解となります。

 1 次方程式の解き方は,まず,移項を使って [math]ax=b[/math] の形をつくるのだと覚えましょう。

数学 Chips 02

比について [math]a:b=ma:mb[/math] が成り立つことを数学 Chips 01 で確認しました。そして,[math]ma:mb[/math] で [math]m=\cfrac{1}{b}[/math] とすれば

[math]\cfrac{a}{b}:1[/math]

となり,[math]\cfrac{a}{b}[/math] が [math]a:b[/math] の比の値になることも説明しました。

今回は,この [math]α:1[/math] の形の比を利用した,量の比較をいくつか考えてみましょう。

 まず,氷上をスケーターがまっすぐに滑っていくところを想像してください。ここで,氷の川が直線上にずっと続いていて,スケーターは川の走りに沿って曲がることなく真っ直ぐに滑っています。しかも,滑り出す直前に背中を押してもらい,その後は惰性で,力を入れることなく,風もまったくない状態で滑っていくことを考えます。
このような場合,スケーターが滑った時間と滑った距離の間には,滑った時間が 2 倍になれば滑った距離が 2 倍になり,滑った時間が 3 倍になれば滑った距離が 3 倍に,・・・というような関係があります。
このときは

(滑った距離):(滑った時間)

という比を考えることができます。
なぜなら,滑った距離を [math]m[/math] 倍したとき,滑った時間も [math]m[/math] 倍され,その比の値が変わらないからです。(この比の値がいろいろ変わるようであれば,比を考えてもそれほど意味がありません。)

いま,[math]2[/math] 秒間滑ったとき滑った距離が [math]18[/math] [math]\mathrm{m}[/math] だったとしましょう。 このとき比は

[math]18:2[/math]

です。もちろんこの比は [math]72:8[/math] としたり,[math]180:20[/math] とすることができます。そして,[math]\cfrac{18}{2}:\cfrac{2}{2}[/math] すなわち [math]9:1[/math] とすると比の値が [math]9[/math] であると考えられます。
これを滑った時間と距離の関係としてみれば,[math]1[/math] 秒で [math]9[/math] [math]\mathrm{m}[/math] 進むということになります。
ところで,ある量を [math]1[/math] とした場合,その量を単位量といいます。したがって,単位量 [math]1[/math] 秒あたりの移動距離は [math]9[/math] [math]\mathrm{m}[/math] であるといえます。そして,これが速さといわれるものなのです。言い替えれば,

(移動距離):(移動にかかった時間)

において,比の値は速さになるのです。

それでは,次の問題を考えてみましょう。
けんじさんは [math]50[/math] [math]\mathrm{m}[/math] を [math]10[/math] 秒で走りました。まなみさんは [math]90[/math] [math]\mathrm{m}[/math] を [math]15[/math] 秒で走りました。けんじさんとまなみさんはどちらが速く走っているでしょうか。

この問題では,単純に走った距離を比べても意味がありません。2 人の走った距離はその走った時間が違うのですから。そこで

(移動距離):(移動にかかった時間 )

の比の値,すなわち単位時間あたりの移動距離である速さを考えるわけです。
 けんじくんは [math]50:10[/math] より [math]5:1[/math]
 まなみさんは [math]90:15[/math] より [math]6:1[/math]
よって,けんじくんは [math]1[/math] 秒間に [math]5[/math] [math]\mathrm{m}[/math] 走り,まなみさんは [math]1[/math] 秒間に [math]6[/math] [math]\mathrm{m}[/math] 走っているので,まなみさんがけんじくんより速く走っていることがわかります。

 このように,比の値が一定の 2 つの量の間の関係を比例関係といい,この関係があるときは単位量あたりの大小を考えることで,上の問題と同様にいろいろな量を比較することができます。

次のような問題を考えてみましょう。
鉄管 A は [math]5[/math] [math]\mathrm{m}[/math] で [math]185[/math] [math]\mathrm{kg}[/math] であり,鉄管 B は [math]7[/math] [math]\mathrm{m}[/math] で [math]203[/math] [math]\mathrm{kg}[/math] です。同じ長さで考えた場合,重いのは A,B どちらの管でしょうか。

普通,鉄管はその長さと重さは比例関係にあると考えられます。すなわち,鉄管の長さが 2 倍になれば重さも 2 倍になり,長さが 3 倍になれば重さも 3 倍になるという具合です。とすると

(鉄管の重さ):(鉄管の長さ)

という比を考え,その比の値を考えることができそうです。
 鉄管 A では [math]185:5[/math] より [math]37:1[/math]
 鉄管 B では [math]203:7[/math] より [math]29:1[/math]
なので,[math]1[/math] [math]\mathrm{m}[/math] あたりの重さは A が [math]37[/math] [math]\mathrm{kg}[/math] で B が [math]29[/math] [math]\mathrm{kg}[/math] となり A の方が重くなります。すなわち,A,B が同じ長さの場合 A が重いといえるのです。


数学 Chips 01

 [math]a÷b=\cfrac{a}{b}[/math] はわり算を分数になおす式で,小学校で学ぶ公式です。例えば [math]2÷3=\cfrac{2}{3}[/math] のようにします。

[注意]今後の説明において [math]a>0,b>0[/math] とします。

 また,[math]\cfrac{a}{b}[/math] は [math]b[/math] をもとにしたときの [math]a[/math] の割合といういい方もします。[math]a[/math] が比べる量,[math]b[/math] がもとにする量です。また [math]a[/math] と [math]b[/math] の比は [math]a:b[/math] であり,比の値が [math]\cfrac{a}{b}[/math] であるともいいます。

 比の値(割合)は,例えば次のような問題を考えるのに役立ちます。

【問題】バスケットのシュートを,あきらくんは 8 回して 4 回入りました。まゆみさんは 12 回して 9 回入りました。この結果からどちらがシュートがうまいと判断できますか。

解答]あきらくんのシュートの入った割合は,
 シュート数をもとにしたときの成功したシュートの割合で考えると   
               [math]\cfrac{4}{8}=0.5[/math]
 同様に,まゆみさんの割合は [math]\cfrac{9}{12}=0.75[/math]
 したがって,[math]0.5<0.75[/math] であるから,
 まゆみさんがあきらくんよりシュートがうまいと判断できる。

【問題】A city の人口は 13,205人,B city の人口は 53,902人です。ある感染症に感染した人が A city では,5,507人,B city では 16,503人です。感染はどちらの city により広がっていると考えられますか。

解答]A city で,人口をもとにした感染者の割合は
 [math]5507÷13205≒0.4170…[/math] よりおよそ [math]0.42[/math]
 同様に B city での割合は
 [math]16503÷53902=0.306…[/math] よりおよそ [math]0.31[/math]
 したがって,[math]0.31<0.42[/math] であるから,
 A city が B city より感染が広がっていると考えられる。

 分数 [math]\cfrac{a}{b}[/math] は,分子と分母に同じ数をかけてもその値が変化しません。例えば [math]\cfrac{1}{2}=1÷2=0.5[/math] ですが,この分数の分子と分母に同じ数 4 をかけても [math]\cfrac{4}{8}=4÷8=0.5[/math] となります。
よって, [math]m>0[/math] としたとき,2 つの比 [math]a:b[/math] と [math]ma:mb[/math] について


[math]a:b=ma:mb[/math]

が成り立つことになります。ところで比 [math]a:b[/math] において,先ほどの [math]m[/math] を [math]m=\cfrac{1}{b}[/math] とすれば

[math]a:b=\cfrac{a}{b}:1[/math]

が成り立ちますが,[math]\cfrac{a}{b}[/math] は [math]a:b[/math] の比の値になっています。すなわち [math]α:1[/math] という比において,その比の値は [math]α[/math] ということになるのです。
このことはとても重要で,比の値を利用した上述の【問題】のようなもの以外に,もっといろいろな量的関係を調べるのに役立ちます。その詳細は次の【数学Chips 02】においてお話ししたいと思います。


令和2年沖縄県立高校入試分析と対策

【国語】

<構成>

第1問【小説】,第2問【説明文】,第3問【古典】,第4問【会話文・作文】で,構成に変化はない。

<難易>

選択問題は,小説と説明文で選択肢がまぎらわしく,若干難化した。記述問題は,自分の言葉で答える問題が1題で,本文と資料を複合的に考えなければならないので難しい。全体としては難化している。

<分析>

小説は,本文だけで登場人物の心情の変化を読み取ることが難しい。選択問題の選択肢をヒントに,物語の流れを振り返るのも一つの解き方であるが,今回はその方法での解法が有効かもしれない。

説明文では,問7の記述問題が本文と資料の二つを内容的にまとめて解答しなければならないため難しい。「新たな社会」「異なる価値観」「議論を重ねる」「共有できる部分を見つけ出す」「新しい概念を生み出す」などがキーになる。

古典は対訳を参照すれば比較的解き易い。

会話文は「来場者へのおもてなし」を中心に話が展開していることがポイントで,流れは追いやすいものとなっている。ただ,問4の「拝啓」で始めた文書を「敬具」で締めるという知識は,盲点だったかもしれない。

<対策>

分析でも述べたが,国語の問題の解き方として,選択問題の選択肢をヒントに,本文を見直すというものもある。効率が悪いので,この方法を主たる解法にしてはならないが,日頃の学習としては,練習しておく必要があるだろう。これは学校の授業だけでは練習が難しいものなので,塾や問題集で練習するしかないだろう。

<平均点予想>

28点~30点と予想する。(昨年の平均点35.0点)

【理科】

<構成>

第1問【生物分野→物理分野】,第2問【地学分野】,第3問【物理分野→生物分野】,第4問【地学分野→物理分野】,第5問【生物分野→化学分野】,第6問【化学分野→生物分野】,第7問【地学分野→地学分野】,第8問【物理分野→化学分野】で,問題の配列に変化があった。ここで,【 】内の矢印は「昨年→今年」の変化を表す。

<難易>

昨年同様,問いの導入文が長い問題があり理解に時間がかかること,計算問題が増えたことなどから難化。

<分析>

物理分野はフックの法則および浮力に関するもの,それに電気回路に関するものが出題された。フックの法則も浮力に関するアルキメデスの原理も問題文中に示されているが,それぞれが本質をしっかり理解していないと解けないもので,難しい。電気回路の問題は標準的。

地学分野は天体の運行,岩石と地層に関する出題。太陽の南中時刻を求めるのに必要なデータを選ばせる,新傾向の問題があった。それ以外は,ほぼ基本的な出題。

生物分野は動物の分類,体のつくり,神経系に関してと,植物の分類,生態系に関する出題。いずれも,基本的な問いであるが,導入文が長くその内容の理解に時間がかかること,一部計算問題があることで難しいセットになっている。

化学分野は塩酸の電気分解と,炭酸水素ナトリウムに関する分解・中和に関する出題。ここでも導入文の実験内容を理解するのに時間がかかると思う。一部,計算問題もあり難しい。

<対策>

理科の用語を暗記するだけでなく,その意味もしっかり理解し,計算が必要なものは,その原理までさかのぼって学習すること。今後の急速に変化する社会に対応するためにも,本物の理科の力をつけることが,ますます重要になってくる。

<平均点予想>

22点~24点と予想する。(昨年の平均点25.0点。)

【英語】

<構成>

第1問・第2問・第3問【リスニング】,第4問・第5問【空欄補充】,第6問【語句整序】,第7問【文整序】,第8問【図表問題】,第9問【会話文】,第10問【長文】,第11問【作文】で構成に変化はない。

<難易>

小問数が40問→43問と増加したが,図表問題,会話文,長文とも話題を追いやすく,さらに,作文は語群があるなどで書きやすい。難易は昨年並み。

<分析>

図表問題では,地図中にいろいろなlandmarkが示されているが,要は道順をたどっていけるかどうかの問題。会話文はオリンピックの聖火リレーが題材で,話の流れも理解しやすいだろう。長文はSNSに関する身近な話題である。難しい単語は訳注がついているものの,流れを追うのが難しかったかもしれない。英作文は,ヒントがある上,主語と動詞をつなげた単純な文で答えられるものもあって,いつもは作文で点数が取れないない人でもいくらかは答えられたのではないだろうか。

<対策>

今年はリスニングに一部,いままでと形式の違うものがあったものの,話す・聞く・書くという総合力が試される出題は,昨年と同様である。まずは設計図にあたる文法を確実に理解することから始めよう。

<平均点予想>

 26点~28点と予想する。(昨年の平均点26.7点)

【社会】

< 構成>

第1問【地理分野】,第2問【地理分野】,第3問【歴史分野】,第4問【歴史分野】,第5問【公民分野】,第6問【公民分野】で昨年に比べ大問が一つ少なくなった。

<難易>

小問数が45問→42問に減少したが,配点の高い記述問題が昨年より多くなり難化した。

<分析>

出題形式は例年通りであるが,複数の問題を一つの選択肢で選ばせる問題が昨年の10問から1問に激減し,使用する言葉をいくつか指定しているが,自分の言葉で答えなければならない記述問題が昨年の2問から4問に増加している。しかもそれぞれ,問題意識を持って勉強していないと,正解を考え出せないものとなっている。

<対策>

やはり何と言っても暗記がものをいう科目ではあるが,一つ一つの学習項目について,しっかりと自分の言葉で説明できる練習をしておきたい。

<平均点予想>

 25点~27点と予想する。(昨年の平均点31.6点)

【数学】

<構成>

第1問【基礎的計算】,第2問【小問集合】,第3問【確率】,第4問【作図】,第5問【文字式を使った証明】,第6問【1次関数】,第7問【反比例のグラフと図】,第8問【平面図形】第9問【空間図形】,第10問【規則性の問題】

<難易>

問題数が40問→41問に増加した。難易は昨年よりやや易化。

<分析>

今年は,2次関数に関する出題がなかった。第8問の問2は新傾向の問題で,図形に関する正しい記述を選ばせる問題。思考力が試される。第10問の規則性の問題が,コンピュータの動作にからませての出題で工夫がうかがえる。ただ本質は,3で割った余りで数を分類しそれらの和について,さらに分類できるかである。

<対策>

問題集などで標準的な入試問題を解き,実践的な力をつけるとともに,国語の力になるのかもしれないが,問題文が長くなったりしても題意を読み取れる読解力を付ける必要がある。

<平均点予想>

28点~30点と予想する。(昨年の平均点28.9点)

20センター試験数学ⅡBの分析

第1問(必答問題)
[1]三角関数
 (1)は三角不等式を解く問題。加法定理で変形し,三角関数を合成するとsinに関する単純な不等式ができる。レベルは基本。
(2)はsinθ,cosθを解にもつ2次方程式に関する問題。解と係数の関係からsinθ+cosθ,sinθcosθの値を求め,sinθ+cosθの平方と結びつける。そして,sinθ,cosθの値から,角度の範囲を求める流れ。レベルは標準。
[2]指数関数・対数関数
 (1)は指数関数を使った条件式から,式の値を求める問題。対称式の扱いがKeyとなる。レベルは基本。
(2)は対数不等式を解く問題。対数の性質を使って式を変形すれば,X,Yの連立不等式に帰着する。あとは,底が3の対数は真数が大きいほど大きいことが分かっていれば手が止まることはないだろう。レベルは標準。

第2問(必答問題)
 二つの放物線と,それらの共通接線で囲まれた部分に関する問題。(1)では共通接線の方程式を求めるが,誘導が丁寧で解き易い。(2),(3)は二つの放物線と共通接線で囲まれた部分の面積に関する設問になっているが,計算量が多い。放物線とその接線で囲まれた部分の面積を求める積分では,被積分関数が完全平方型になっていることを利用すると計算が少し楽になる。(4)は求めたaの3次関数の最大値を求めるが,定義域内では極大値しかなく,そこが最大値になる。レベルは標準。

第3問(選択問題)
 漸化式を解く問題。誘導は丁寧だが,式が複雑なので,途中の式変形を何のために行っているのかしっかりと確認しながら解く必要がある。(4)は実質,整数に関する余りの問題で,3で割った余りで分類していることと,連続するする二つの整数の積は2で割り切れることがKeyになる。レベルは標準。

第4問(選択問題)
 空間ベクトルの関する問題。これも誘導に従って解いていくことになるが,ベクトルの各成分が,共通な因数を持っているときは,その因数でくくったあとの成分で考えると見通しがよくなることが多い。まさにこの問題は,そうすることで,計算および図形的な性質が見抜けると思う。レベルは標準。

第5問(選択問題)
 選択する受験生は少ないと思うので,分析は省略する。

【総評】誘導が丁寧なので,方針を立てるのはさほど難しくないが,計算量が多く,かつ複雑である。おそらく数学ⅡBの受験者は,理系の人が多いと思われるが,考え方ももちろん大切だけれど,計算をサクサク進められることも同じくらい大切だぞとの,メッセージなのかも知れない。去年にもまして計算が面倒なので,平均点は下がると思われる。

20センター試験数学ⅠAの分析

第1問(必答問題)
[1]1次関数
 直線の傾きが a の2次式になっているので,実質は2次不等式の解法や根号の入った数を代入する,式の値の問題になっている。レベルは基本。
[2]集合
 4,6,24それぞれの倍数の集合が与えられ,それらの交わりや,それぞれの補集合との交わりを考え,その要素を考察する問題。さらに,それらの集合間で命題を与え,反例を探す。レベルは標準。
[3]2次関数
 x軸と異なる2つの交点をもつ放物線に関する問題。y軸に平行な線分と共有点をもつとき,対称軸がその線分の左側にくる場合,右側にくる場合で,共有点の位置の変化がイメージできるかどうかがポイントとなる。レベルは標準。

第2問(必答問題)
[1]三角比
 三角形の内角の二等分線が,その対辺を内角を挟む2辺の比に分けることを使う問題。レベルは基本。
[2]データの分析
 (1)が,一般的な四分位数に関する性質を問う問題。一見すると戸惑うかもしれないが,明らかに正しいと判断できる選択肢が探せるので簡単。残りの(2),(3),(4)は,いずれも表の読み取りができれば容易に正答できる。レベルは基本。

第3問(選択問題)
[1]確率
 様々な確率の正誤を判断する問題。一つ一つ丹念に考えれば,難しくないと思われるが,選択肢③が条件付き確率になっていることに気付かない受験生がいるかもしれない。レベルは標準。
[2]確率
 独立試行(反復試行)の確率,条件付き確率を求める問題。センター試験の出題らしく,前出の設問の内容をうまく使うことがポイントとなる。レベルは標準。

第4問(選択問題)
 循環小数を分数で表すことに関する出題。(1)は十進法で(2)は七進法での出題。手法は典型的であるが,(2)は7の二乗をかけることで,桁数を2だけ上げられることの意味がわからない受験生もいるかもしれない。(2)の後半は,不定方程式を考えることになるが,複雑さはない。レベルは標準。

第5問(選択問題)
 チェバの定理,メネラウスの定理,方べきの定理または方べきの定理の逆の運用ができるかを問うている。概ね定理をそのまま使えば難しくないが,最後の設問でAE・ACの値を手掛かりにAG・ABの値を求め,AE・AC=AG・ABを導き,B,C,E,Gが同一円周上の点であることに気付けるかがKeyである。レベルは標準。

【総評】
 センター試験最後の出題となり,共通テストを意識してか,真新しい切り込み方の設問が見られた(第2問[2]の(1),第3問[1])。しかし,日頃から,一つ一つの問題を自分なりに分析し(無意識でも)知識の中で体系化して勉強している人にとっては問題はないように思われる。まさに,来年度の共通テストの対策としても,そのような勉強法が求められると考える。平均点は,どこかでまごつくと,全滅になる可能性のあるセットになっているため,去年より下がると考える。

19センター試験数ⅡBの分析

2019年センター試験数ⅡBの分析をしたいと思います。なお,選択問題は選択者が多いと思われる[第3問]と[第4問]とします。

第1問[1]三角関数の問題 倍角の公式や三角関数の合成を使って,最終的に三角方程式を解かせる典型的な出題。どこかで一度は練習したことのある問題であろうと思われ,易しい。
[2]指数・対数関数の問題 導きが丁寧で素直な問題だが,数式の展開力が若干必要で,難しいと感じる人もいるかもしれない。

第2問 微分積分の問題(1)3次関数の係数決定に関する典型問題。
(2)接線の決定とともに,曲線・直線で囲まれる部分の面積を求める問題。面積を求めるときは,導きに従うため,計算中心の出題。
(3)共通接線をもとに(2)の面積を,具体的に求める問題。これも導きに従って解くことになる。

第3問 数列の問題(1)Sn,Tnをn=2のときに具体化するだけであるが,後の設問のためにも,ともにnの式で表しておくほうが良いだろう。
(2)(1)でSn,Tnをnの式で表しておけば問題なし。
(3)与えられている漸化式をもとにして,新たな漸化式を作る。とにかくn番目とn+1番目の関係を求めるのだから,n+1番目の形を変形して,n番目の形を作り出すしかない。これが,意外と難しいのかもしれない。{bn}の漸化式は典型的な隣接二項間の漸化式。

第4問 ベクトルの問題(1)内積が0になるとき2つのベクトルのなす角が90度になることは常識レベル。
(2)内積を利用して,なす角を求めたり,ベクトルの大きさを求めたりする問題。問題を解く中で四角形ABCDが等脚台形であることをしっかり押さえよう。
(3)三角錐の高さを求める問題であるが,導きが丁寧で解き易いと思う。それを利用して,三角錐BOACの体積Vを求める。
(4)(3)で三角錐OABCDを二分割しているわけだが,(3)とは違う方の三角錐は底面積が2倍になるので体積は2V。よって,三角錐OABCDの体積はV+2V=3Vとなる。

[総評]全体的に,計算量が例年に比べ少なくなっているが,導きに従って進めるものの,展開力が試される部分もあり,平均点は昨年並みになると予想する。

19センター試験数ⅠAの分析

2019年センター試験数ⅠAの分析をしたいと思います。なお,選択問題は選択者が多いと思われる確率[第3問]と整数問題[第4問]とします。

第1問[1]数式処理の問題。平方根の中が平方完成できる式になっている場合,根号をはずすときには絶対値をつけなければならないことに注意。次に,絶対値の外し方が問題になっていて,その中の式が0になるときの文字の値を基準に場合分けをしてはずす。ただ,本問では,場合分けの基準が見えているので解きやすい。最後は,単なる1次方程式だが,場合分けの範囲に,求めた値が乗るかをチェックすることを忘れずに。
[2]論理の問題。(1)「AかつB」の否定は「(Aでない)または(Bでない)」であることに注意。(2)条件の必要性・十分性を問う典型問題。題材が整数の偶奇にかんするものなので,具体的な数を思い浮かべれば解きやすいと思う。また,必要性・十分性を考えるとき,もとの命題と同値な対偶命題を使えば,よりすっきり判断できる場合もあるので,対偶命題の作り方もチェックしておこう。
[3]2次関数の典型問題。ひねりもないので,素直に解けるはず。これが難しいと思う人は要注意。

第2問[1]三角比に関する典型問題。これも第1問[3]と同様に,素直に解ける問題。補角の三角比の値に注意。
[2]統計に関する問題。小問はいずれも計算しないで解ける。箱ひげ図の見方,平均値,分散,標準偏差の意味を理解していれば容易に解ける。(3)は,いわゆる偏差値を算出するときの変数変換がテーマ。平均値0,標準偏差1は常識レベル。最後の散布図を選ぶ問題は,分布が図4と同じになり,スケールが変わることと,標準偏差が1となることから判断する。

第3問 確率に関する典型問題。構造も簡単なものなので解き易いが,計算が面倒。時間に追われるかもしれない。ただ,例にもれず,前の設問の解答を順次使いながら解くので,どこかで計算ミスするとその後は全滅になるので注意が必要。

第4問 不定方程式に関する問題。整数解の一つを求めることが大切だが,逐次代入する方法では時間がとられてしまい,後半の出題でも時間に追われる。ユークリッドの互除法の手法を使って,不定方程式をもう少し小さな数のものに帰着させるのがよい。(3)が一見,前とのつながりがないように感じられるが,一番最後でしっかりつながってくる面白い出題。

【総評】全体的に,数ⅠAの典型問題で,解き易い内容になっている。ただ,計算が面倒だったりするので,日ごろから計算力をつける練習もすべきだ。平均点は去年並みか若干上回ると予想する。

数学での抽象化と具体化の行き来。

数学は抽象的な科目だと言われますが,それを意識したことはあるでしょうか?

そもそも抽象的とはどういう事でしょう。辞書を引いてみると

「いくつかの事物・表象から共通する性質を引き出し,それを一般化して思考するさま」(明鏡国語辞典より)

とあります。

共通する性質を引き出す?一般化??思考するさま??? ふう。読むだけで疲れる。そうですよね。

では,あれこれ考える前に,

具体的(?)に数学の抽象化の例を挙げてみます。びっくりするほど,あっさりしています。

数学では,偶数(2で割って割り切れる数)をnを自然数として,2nと表します。

これが抽象化です。「え?」と思った人もいるのでは?

たった2nと書いただけ。これがあの「いくつかの事物・・・思考するさま」なのでしょうか。

そうです。これでいいのです。(ちなみに2nは「2かけるn」のことです。)

抽象化を進めれば進めるほど,表現は単純になります。

偶数と言って思い浮かべるのは,2とか10とか36とかだと思いますが,

「思い浮かぶだけ,偶数を言ってごらん」と言われたら,もう終わりのない作業になります。

生涯かけても終わりません。人生の無駄です。何故なら,偶数は無限にあるから・・・。

しかし「偶数は2nと表現します。」といったら,これだけで,無限にある偶数を全部(本当は無限にあるもの

は全体もないので,全部などと言えないのですが・・・)一言でいったことになります。

偶数の「2で割って割り切れるもの」という共通な性質を2nは過不足なく表現しているのです。

次は具体化です。抽象化したものは,実際に利用するときは具体化して考えます。

先ほど思い浮かんだ2とか10とか36は,具体化した偶数です。

では,抽象化(偶数2n)→具体化(2とか10とか36)の手続きは?

2nという表現において,nは自然数(ものを数えるときの数)なのだから,nを1にしてみます。

nという抽象的な数を具体的な数1に書きかえることを,nに1を代入するといいます。

すると,2×1=2

具体的な数2が出てきました。

ところで,

「nに1を代入してごらん」と指示すると,

「2×1n」のようにnが残ったまま1を書く人が意外と多くいます。

nに1を代入するときは,nが1に書き換わる「抽象化→具体化の変換」なので,nが残るはずはありません。

気を付けましょう。

つぎにnに5を代入してみましょう。2×5=10

さらにnに18を代入すると,2×18=36

ほらほら,nに適当な自然数を代入することで,次々と具体的な偶数が作られていきます。

中学以上の数学は,まさにこの抽象化,具体化を文字式を使いながら行っていきます。

だから,具体的にわからなければ抽象的な表現を,抽象的にわからなければ具体的な表現を

と意識しながら進めると,意外に理解が進むかもしれません。

少し,話題はそれますが,人類がこの数学という抽象的な表現方法を手に入れたことにより,

自分たちの生活する環境を、いやもっと大きく宇宙全体を考えることができるようになりました。

人類以外の生物には決してできないことです。

そして,今や,物理学という,数学を表現手段とする学問で,宇宙の全てをたった一つの数式で表そうという

すごいことを研究している人々もいます。

興味があれば,そういった関係の本も出版されているので読んでみてはどうでしょう。

抽象化,おそるべし!具体化,たのしきかな!

平成30年度県立高校入試分析と対策

【国語】
 <構成>
 第1問【小説】,第2問【説明文】,第3問【古典】,第4問【会話文・作文】で,構成に変化はない。
 <難易>
 記述問題が2題→3題と増加したが,難易は昨年並み。
 <分析>
 「当てはまらないもの」を選ばせるという出題の工夫が見られた。
 <対策>
 今後は,与えれらた文章や資料をもとに,自分の考えを自分の言葉で述べる力が試される問題が
 確実に増加する。「これは何だろう。」「どういう事だろう。」という問題意識をもち,それを
 文章で表現する訓練を日頃から行う必要がある。
 <平均点予想>
 31点~33点と予想する。(昨年の平均点31.5点)[実際の平均点33.5点]

【理科】
 <構成>
 第1問【生物分野】,第2問【地学分野】,第3問【化学分野】,第4問【物理分野】,第5問【生物分野】
 第6問【地学分野】,第7問【物理分野】,第8問【化学分野】で,構成に変化はない。
 <難易>
 記述問題が3題→5題と増加し,問題設定も複雑な問題があり難化した。
 <分析>
 第3問グラフの折れ線の意味の読み取りや第7問の定量的な出題が昨年に比べ難しい。
 <対策>
 実験の目的,結果から結論付けられることなど,日頃の授業で意識して学習しよう。単なる暗記では
 今後も確実に増加する応用力が問われる問題には対処できない。
 <平均点予想>
 24点~26点と予想する。(昨年の平均点32.8点。)[実際の平均点24.3点]

【英語】
 <構成>
 第1問・第2問・第3問【リスニング】,第4問・第5問【空欄補充】,第6問【語句整序】第7問【文整序】
 第8問【図表問題】,第9問【会話文】,第10問【長文】,第11問【作文】
 <難易>
 小問数が31問→38問と増加し,会話文と長文の語数も増加したため難化した。
 <分析>
 長文の語数が増加したのに加え,題材がアカモクという海藻に関するものでなじみの薄い題材であった。
 さらに,注釈された単語数も去年の倍になっており,一層読みづらかったものと思われる。
 <対策>
 今後,話す・聞く・書くという総合力が試される出題がますます増加するだろうが,まずは設計図に
 あたる文法を確実に理解しよう。
 <平均点予想>
 27点~29点と予想する。(昨年の平均点31.0点)[実際の平均点27.5点]

【社会】
 <構成>
 第1問【地理分野】,第2問【地理分野】,第3問【歴史分野】,第4問【歴史分野】,第5問【公民分野】
 第6問【公民分野】,第7問【公民分野】で構成に変化はない。
 <難易>
 小問数が50問→48問に減少したが,難易は昨年並み。
 <分析>
 第7問は去年同様「沖縄県の課題」に関する出題だったが,ことしはより深く掘り下げたものに
 なっていた。問4は「平和の礎」の建設を行った元知事の名前を問うものだったが,学習していない
 受検者もいたのでは。
 <対策>
 ひとつひとつの知識を身につけるのは当然だが,それらを有機的につなげていく作業も必要になる。
 融合問題の練習を積んでいくことで有機的なとらえ方の感覚を身につけよう。
 <平均点予想>
 30点~32点と予想する。(昨年の平均点31.4点)[実際の平均点29.1点]

【数学】
 <構成>
 第1問【基礎的計算】,第2問【小問集合】,第3問【統計】,第4問【平面図形の証明】
 第5問【場合の数・確率】,第6問【1次関数】,第7問【2次関数】,第8問【平面図形】第9問【空間図形】,
 第10問【規則性の問題】
 <難易>
 問題数が46問→42問に減少したが,難易は若干難化。
 <分析>
 証明問題は易しい反面,回転体の体積や体積の比に関する問題が難しく難易のバランスを保っている。
 <対策>
 まずは,計算を確実にできるようにすること。その上で,各分野の典型問題を徹底して練習することで
 ある。また,考えることを面倒くさがらないということも意外に大切。
 <平均点予想>
 27点~29点と予想する。(昨年の平均点29.4点)[実際の平均点31.6点]