数学での抽象化と具体化の行き来。

数学は抽象的な科目だと言われますが,それを意識したことはあるでしょうか?

そもそも抽象的とはどういう事でしょう。辞書を引いてみると

「いくつかの事物・表象から共通する性質を引き出し,それを一般化して思考するさま」(明鏡国語辞典より)

とあります。

共通する性質を引き出す?一般化??思考するさま??? ふう。読むだけで疲れる。そうですよね。

では,あれこれ考える前に,

具体的(?)に数学の抽象化の例を挙げてみます。びっくりするほど,あっさりしています。

数学では,偶数(2で割って割り切れる数)をnを自然数として,2nと表します。

これが抽象化です。「え?」と思った人もいるのでは?

たった2nと書いただけ。これがあの「いくつかの事物・・・思考するさま」なのでしょうか。

そうです。これでいいのです。(ちなみに2nは「2かけるn」のことです。)

抽象化を進めれば進めるほど,表現は単純になります。

偶数と言って思い浮かべるのは,2とか10とか36とかだと思いますが,

「思い浮かぶだけ,偶数を言ってごらん」と言われたら,もう終わりのない作業になります。

生涯かけても終わりません。人生の無駄です。何故なら,偶数は無限にあるから・・・。

しかし「偶数は2nと表現します。」といったら,これだけで,無限にある偶数を全部(本当は無限にあるもの

は全体もないので,全部などと言えないのですが・・・)一言でいったことになります。

偶数の「2で割って割り切れるもの」という共通な性質を2nは過不足なく表現しているのです。

次は具体化です。抽象化したものは,実際に利用するときは具体化して考えます。

先ほど思い浮かんだ2とか10とか36は,具体化した偶数です。

では,抽象化(偶数2n)→具体化(2とか10とか36)の手続きは?

2nという表現において,nは自然数(ものを数えるときの数)なのだから,nを1にしてみます。

nという抽象的な数を具体的な数1に書きかえることを,nに1を代入するといいます。

すると,2×1=2

具体的な数2が出てきました。

ところで,

「nに1を代入してごらん」と指示すると,

「2×1n」のようにnが残ったまま1を書く人が意外と多くいます。

nに1を代入するときは,nが1に書き換わる「抽象化→具体化の変換」なので,nが残るはずはありません。

気を付けましょう。

つぎにnに5を代入してみましょう。2×5=10

さらにnに18を代入すると,2×18=36

ほらほら,nに適当な自然数を代入することで,次々と具体的な偶数が作られていきます。

中学以上の数学は,まさにこの抽象化,具体化を文字式を使いながら行っていきます。

だから,具体的にわからなければ抽象的な表現を,抽象的にわからなければ具体的な表現を

と意識しながら進めると,意外に理解が進むかもしれません。

少し,話題はそれますが,人類がこの数学という抽象的な表現方法を手に入れたことにより,

自分たちの生活する環境を、いやもっと大きく宇宙全体を考えることができるようになりました。

人類以外の生物には決してできないことです。

そして,今や,物理学という,数学を表現手段とする学問で,宇宙の全てをたった一つの数式で表そうという

すごいことを研究している人々もいます。

興味があれば,そういった関係の本も出版されているので読んでみてはどうでしょう。

抽象化,おそるべし!具体化,たのしきかな!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です