比について a:b=ma:mb が成り立つことを数学 Chips 01 で確認しました。そして,ma:mb で m=1b とすれば
ab:1
となり,ab が a:b の比の値になることも説明しました。
今回は,この α:1 の形の比を利用した,量の比較をいくつか考えてみましょう。
まず,氷上をスケーターがまっすぐに滑っていくところを想像してください。ここで,氷の川が直線上にずっと続いていて,スケーターは川の走りに沿って曲がることなく真っ直ぐに滑っています。しかも,滑り出す直前に背中を押してもらい,その後は惰性で,力を入れることなく,風もまったくない状態で滑っていくことを考えます。
このような場合,スケーターが滑った時間と滑った距離の間には,滑った時間が 2 倍になれば滑った距離が 2 倍になり,滑った時間が 3 倍になれば滑った距離が 3 倍に,・・・というような関係があります。
このときは
(滑った距離):(滑った時間)
という比を考えることができます。
なぜなら,滑った距離を m 倍したとき,滑った時間も m 倍され,その比の値が変わらないからです。(この比の値がいろいろ変わるようであれば,比を考えてもそれほど意味がありません。)
いま,2 秒間滑ったとき滑った距離が 18 m だったとしましょう。 このとき比は
18:2
です。もちろんこの比は 72:8 としたり,180:20 とすることができます。そして,182:22 すなわち 9:1 とすると比の値が 9 であると考えられます。
これを滑った時間と距離の関係としてみれば,1 秒で 9 m 進むということになります。
ところで,ある量を 1 とした場合,その量を単位量といいます。したがって,単位量 1 秒あたりの移動距離は 9 m であるといえます。そして,これが速さといわれるものなのです。言い替えれば,
比
(移動距離):(移動にかかった時間)
において,比の値は速さになるのです。
それでは,次の問題を考えてみましょう。
けんじさんは 50 m を 10 秒で走りました。まなみさんは 90 m を 15 秒で走りました。けんじさんとまなみさんはどちらが速く走っているでしょうか。
この問題では,単純に走った距離を比べても意味がありません。2 人の走った距離はその走った時間が違うのですから。そこで
(移動距離):(移動にかかった時間 )
の比の値,すなわち単位時間あたりの移動距離である速さを考えるわけです。
けんじくんは 50:10 より 5:1
まなみさんは 90:15 より 6:1
よって,けんじくんは 1 秒間に 5 m 走り,まなみさんは 1 秒間に 6 m 走っているので,まなみさんがけんじくんより速く走っていることがわかります。
このように,比の値が一定の 2 つの量の間の関係を比例関係といい,この関係があるときは単位量あたりの大小を考えることで,上の問題と同様にいろいろな量を比較することができます。
次のような問題を考えてみましょう。
鉄管 A は 5 m で 185 kg であり,鉄管 B は 7 m で 203 kg です。同じ長さで考えた場合,重いのは A,B どちらの管でしょうか。
普通,鉄管はその長さと重さは比例関係にあると考えられます。すなわち,鉄管の長さが 2 倍になれば重さも 2 倍になり,長さが 3 倍になれば重さも 3 倍になるという具合です。とすると
(鉄管の重さ):(鉄管の長さ)
という比を考え,その比の値を考えることができそうです。
鉄管 A では 185:5 より 37:1
鉄管 B では 203:7 より 29:1
なので,1 m あたりの重さは A が 37 kg で B が 29 kg となり A の方が重くなります。すなわち,A,B が同じ長さの場合 A が重いといえるのです。