数学 Chips 02

比について ab=mamb が成り立つことを数学 Chips 01 で確認しました。そして,mambm=1b とすれば

ab1

となり,abab の比の値になることも説明しました。

今回は,この α1 の形の比を利用した,量の比較をいくつか考えてみましょう。

 まず,氷上をスケーターがまっすぐに滑っていくところを想像してください。ここで,氷の川が直線上にずっと続いていて,スケーターは川の走りに沿って曲がることなく真っ直ぐに滑っています。しかも,滑り出す直前に背中を押してもらい,その後は惰性で,力を入れることなく,風もまったくない状態で滑っていくことを考えます。
このような場合,スケーターが滑った時間と滑った距離の間には,滑った時間が 2 倍になれば滑った距離が 2 倍になり,滑った時間が 3 倍になれば滑った距離が 3 倍に,・・・というような関係があります。
このときは

(滑った距離):(滑った時間)

という比を考えることができます。
なぜなら,滑った距離を m 倍したとき,滑った時間も m 倍され,その比の値が変わらないからです。(この比の値がいろいろ変わるようであれば,比を考えてもそれほど意味がありません。)

いま,2 秒間滑ったとき滑った距離が 18 m だったとしましょう。 このとき比は

182

です。もちろんこの比は 728 としたり,18020 とすることができます。そして,18222 すなわち 91 とすると比の値が 9 であると考えられます。
これを滑った時間と距離の関係としてみれば,1 秒で 9 m 進むということになります。
ところで,ある量を 1 とした場合,その量を単位量といいます。したがって,単位量 1 秒あたりの移動距離は 9 m であるといえます。そして,これが速さといわれるものなのです。言い替えれば,

(移動距離):(移動にかかった時間)

において,比の値は速さになるのです。

それでは,次の問題を考えてみましょう。
けんじさんは 50 m10 秒で走りました。まなみさんは 90 m15 秒で走りました。けんじさんとまなみさんはどちらが速く走っているでしょうか。

この問題では,単純に走った距離を比べても意味がありません。2 人の走った距離はその走った時間が違うのですから。そこで

(移動距離):(移動にかかった時間 )

の比の値,すなわち単位時間あたりの移動距離である速さを考えるわけです。
 けんじくんは 5010 より 51
 まなみさんは 9015 より 61
よって,けんじくんは 1 秒間に 5 m 走り,まなみさんは 1 秒間に 6 m 走っているので,まなみさんがけんじくんより速く走っていることがわかります。

 このように,比の値が一定の 2 つの量の間の関係を比例関係といい,この関係があるときは単位量あたりの大小を考えることで,上の問題と同様にいろいろな量を比較することができます。

次のような問題を考えてみましょう。
鉄管 A は 5 m185 kg であり,鉄管 B は 7 m203 kg です。同じ長さで考えた場合,重いのは A,B どちらの管でしょうか。

普通,鉄管はその長さと重さは比例関係にあると考えられます。すなわち,鉄管の長さが 2 倍になれば重さも 2 倍になり,長さが 3 倍になれば重さも 3 倍になるという具合です。とすると

(鉄管の重さ):(鉄管の長さ)

という比を考え,その比の値を考えることができそうです。
 鉄管 A では 1855 より 371
 鉄管 B では 2037 より 291
なので,1 m あたりの重さは A が 37 kg で B が 29 kg となり A の方が重くなります。すなわち,A,B が同じ長さの場合 A が重いといえるのです。