数学 Chips 03

  1 次方程式の解法について説明します。
[math]2x+3=x+4[/math] という式は [math]x=2[/math] のとき,左辺は

[math]2×2+3=4+3=7[/math]

右辺は

[math]2+4=6[/math]

となり, [math]2x+3=x+4[/math] の等号は成り立ちません。
しかし,[math]x=1[/math] のとき,左辺は

[math]2×1+3=2+3=5[/math]

右辺は

[math]1+4=5[/math]

となり,等号が成り立ちます。
このように [math]x[/math] の値によって成り立ったり成り立たなかったりする式を [math]x[/math] の方程式といい,[math]x[/math] の 1 次式の方程式なので,[math]x[/math] の 1 次方程式といいます。

[参考][math]x[/math] は,1 次,[math]x^2[/math] は 2 次,[math]x^3[/math] は 3 次 … のように,[math]x[/math] がいくつかけられていいるかが,次数です。

 1 次方程式は最終的には [math]ax=b[/math] の形に変形します。(ただし,[math]a≠0[/math] とします。)そして,[math]ax=b[/math] はその両辺を [math]a[/math] で割って [math]\cfrac{ax}{a}=\cfrac{b}{a}[/math] として,左辺では分母子が約分されて [math]x[/math] だけになります。結局 [math]x=\cfrac{b}{a}[/math] で,この 1 次方程式が解けたことになるのです。

 それでは, [math]2x+3=x+4[/math] の解き方を考えましょう。
とにかく,式変形をして [math]ax=b[/math] としなければならないことに注意すると,[math]2x+3=x+4[/math] の左辺の [math]+3[/math] は右辺に,右辺の [math]x[/math] は左辺にもってくるべきです。
 実は,「[math]=[/math]」の左(左辺)のものを右(右辺)にもってきたり,「[math]=[/math]」の右(右辺)のものを左(左辺)にもってきたりする方法があるのです。それを移項といいます。
 移項では,移項するものの符号を「[math]+[/math]」は「[math]-[/math]」に「[math]-[/math]」は「[math]+[/math]」に換えます。
よって,[math]2x+3=x+4[/math] は

[math]2x-x=4-3[/math]

と変形できます。すると [math]2x-x=(2-1)x=x[/math] であり,[math]4-3=1[/math] ですから,

[math]x=1[/math]

が,解となります。

 1 次方程式の解き方は,まず,移項を使って [math]ax=b[/math] の形をつくるのだと覚えましょう。

数学 Chips 02

比について [math]a:b=ma:mb[/math] が成り立つことを数学 Chips 01 で確認しました。そして,[math]ma:mb[/math] で [math]m=\cfrac{1}{b}[/math] とすれば

[math]\cfrac{a}{b}:1[/math]

となり,[math]\cfrac{a}{b}[/math] が [math]a:b[/math] の比の値になることも説明しました。

今回は,この [math]α:1[/math] の形の比を利用した,量の比較をいくつか考えてみましょう。

 まず,氷上をスケーターがまっすぐに滑っていくところを想像してください。ここで,氷の川が直線上にずっと続いていて,スケーターは川の走りに沿って曲がることなく真っ直ぐに滑っています。しかも,滑り出す直前に背中を押してもらい,その後は惰性で,力を入れることなく,風もまったくない状態で滑っていくことを考えます。
このような場合,スケーターが滑った時間と滑った距離の間には,滑った時間が 2 倍になれば滑った距離が 2 倍になり,滑った時間が 3 倍になれば滑った距離が 3 倍に,・・・というような関係があります。
このときは

(滑った距離):(滑った時間)

という比を考えることができます。
なぜなら,滑った距離を [math]m[/math] 倍したとき,滑った時間も [math]m[/math] 倍され,その比の値が変わらないからです。(この比の値がいろいろ変わるようであれば,比を考えてもそれほど意味がありません。)

いま,[math]2[/math] 秒間滑ったとき滑った距離が [math]18[/math] [math]\mathrm{m}[/math] だったとしましょう。 このとき比は

[math]18:2[/math]

です。もちろんこの比は [math]72:8[/math] としたり,[math]180:20[/math] とすることができます。そして,[math]\cfrac{18}{2}:\cfrac{2}{2}[/math] すなわち [math]9:1[/math] とすると比の値が [math]9[/math] であると考えられます。
これを滑った時間と距離の関係としてみれば,[math]1[/math] 秒で [math]9[/math] [math]\mathrm{m}[/math] 進むということになります。
ところで,ある量を [math]1[/math] とした場合,その量を単位量といいます。したがって,単位量 [math]1[/math] 秒あたりの移動距離は [math]9[/math] [math]\mathrm{m}[/math] であるといえます。そして,これが速さといわれるものなのです。言い替えれば,

(移動距離):(移動にかかった時間)

において,比の値は速さになるのです。

それでは,次の問題を考えてみましょう。
けんじさんは [math]50[/math] [math]\mathrm{m}[/math] を [math]10[/math] 秒で走りました。まなみさんは [math]90[/math] [math]\mathrm{m}[/math] を [math]15[/math] 秒で走りました。けんじさんとまなみさんはどちらが速く走っているでしょうか。

この問題では,単純に走った距離を比べても意味がありません。2 人の走った距離はその走った時間が違うのですから。そこで

(移動距離):(移動にかかった時間 )

の比の値,すなわち単位時間あたりの移動距離である速さを考えるわけです。
 けんじくんは [math]50:10[/math] より [math]5:1[/math]
 まなみさんは [math]90:15[/math] より [math]6:1[/math]
よって,けんじくんは [math]1[/math] 秒間に [math]5[/math] [math]\mathrm{m}[/math] 走り,まなみさんは [math]1[/math] 秒間に [math]6[/math] [math]\mathrm{m}[/math] 走っているので,まなみさんがけんじくんより速く走っていることがわかります。

 このように,比の値が一定の 2 つの量の間の関係を比例関係といい,この関係があるときは単位量あたりの大小を考えることで,上の問題と同様にいろいろな量を比較することができます。

次のような問題を考えてみましょう。
鉄管 A は [math]5[/math] [math]\mathrm{m}[/math] で [math]185[/math] [math]\mathrm{kg}[/math] であり,鉄管 B は [math]7[/math] [math]\mathrm{m}[/math] で [math]203[/math] [math]\mathrm{kg}[/math] です。同じ長さで考えた場合,重いのは A,B どちらの管でしょうか。

普通,鉄管はその長さと重さは比例関係にあると考えられます。すなわち,鉄管の長さが 2 倍になれば重さも 2 倍になり,長さが 3 倍になれば重さも 3 倍になるという具合です。とすると

(鉄管の重さ):(鉄管の長さ)

という比を考え,その比の値を考えることができそうです。
 鉄管 A では [math]185:5[/math] より [math]37:1[/math]
 鉄管 B では [math]203:7[/math] より [math]29:1[/math]
なので,[math]1[/math] [math]\mathrm{m}[/math] あたりの重さは A が [math]37[/math] [math]\mathrm{kg}[/math] で B が [math]29[/math] [math]\mathrm{kg}[/math] となり A の方が重くなります。すなわち,A,B が同じ長さの場合 A が重いといえるのです。


数学 Chips 01

 [math]a÷b=\cfrac{a}{b}[/math] はわり算を分数になおす式で,小学校で学ぶ公式です。例えば [math]2÷3=\cfrac{2}{3}[/math] のようにします。

[注意]今後の説明において [math]a>0,b>0[/math] とします。

 また,[math]\cfrac{a}{b}[/math] は [math]b[/math] をもとにしたときの [math]a[/math] の割合といういい方もします。[math]a[/math] が比べる量,[math]b[/math] がもとにする量です。また [math]a[/math] と [math]b[/math] の比は [math]a:b[/math] であり,比の値が [math]\cfrac{a}{b}[/math] であるともいいます。

 比の値(割合)は,例えば次のような問題を考えるのに役立ちます。

【問題】バスケットのシュートを,あきらくんは 8 回して 4 回入りました。まゆみさんは 12 回して 9 回入りました。この結果からどちらがシュートがうまいと判断できますか。

解答]あきらくんのシュートの入った割合は,
 シュート数をもとにしたときの成功したシュートの割合で考えると   
               [math]\cfrac{4}{8}=0.5[/math]
 同様に,まゆみさんの割合は [math]\cfrac{9}{12}=0.75[/math]
 したがって,[math]0.5<0.75[/math] であるから,
 まゆみさんがあきらくんよりシュートがうまいと判断できる。

【問題】A city の人口は 13,205人,B city の人口は 53,902人です。ある感染症に感染した人が A city では,5,507人,B city では 16,503人です。感染はどちらの city により広がっていると考えられますか。

解答]A city で,人口をもとにした感染者の割合は
 [math]5507÷13205≒0.4170…[/math] よりおよそ [math]0.42[/math]
 同様に B city での割合は
 [math]16503÷53902=0.306…[/math] よりおよそ [math]0.31[/math]
 したがって,[math]0.31<0.42[/math] であるから,
 A city が B city より感染が広がっていると考えられる。

 分数 [math]\cfrac{a}{b}[/math] は,分子と分母に同じ数をかけてもその値が変化しません。例えば [math]\cfrac{1}{2}=1÷2=0.5[/math] ですが,この分数の分子と分母に同じ数 4 をかけても [math]\cfrac{4}{8}=4÷8=0.5[/math] となります。
よって, [math]m>0[/math] としたとき,2 つの比 [math]a:b[/math] と [math]ma:mb[/math] について


[math]a:b=ma:mb[/math]

が成り立つことになります。ところで比 [math]a:b[/math] において,先ほどの [math]m[/math] を [math]m=\cfrac{1}{b}[/math] とすれば

[math]a:b=\cfrac{a}{b}:1[/math]

が成り立ちますが,[math]\cfrac{a}{b}[/math] は [math]a:b[/math] の比の値になっています。すなわち [math]α:1[/math] という比において,その比の値は [math]α[/math] ということになるのです。
このことはとても重要で,比の値を利用した上述の【問題】のようなもの以外に,もっといろいろな量的関係を調べるのに役立ちます。その詳細は次の【数学Chips 02】においてお話ししたいと思います。